














設 計 2024年1月
敷 地 愛知県名古屋市
構 造 木造三階建
用 途 一戸建ての住宅
延べ面積 237㎡
Yuki Architects との共同設計
名古屋市の市街地にある住宅地。戶建ての住宅が密集する地域である。計画地はかつて庭付きの日本家屋が建っていた典型的な分譲地で、7つに区割りされたうちの3区画が計画地となっている。他の区画で はすでに建設が進み、ひしめくように戶建て住宅が立ち並んでいた。 施主の要望として、ゲストを招ける広く天井の高いリビング、静かな寝室、快適な温熱環境、高い耐震性能が求められた。
計画を進めるうえで、分譲地特有の周辺環境との距離の近さが課題となった。協定により⺠法上の隣地境界線からの離隔距離の規制がなく、隣地建物との距離がとても近い。2面の道路に接しているものの、 住宅地にしては交通量が多く、道路側に開いていくことが必ずしも心地良いものとは思えなかった。
そのような条件下において、“距離”をとるのではなく、“間”をつくることを設計方針とした。それは2つの領域の“あいだ”を作ることであり、空間としての“ま”が取り持つ関係性を築いていくことだ。
駐車スペースを除く敷地目一杯に建物を配置し、その一部を切り取るように2つの坪庭とポーチ・バルコニーを設けた。坪庭は建物と周辺環境との間として設えた。植栽により柔らかく外部からの視線を遮 り、閉塞する一階部分に視覚的な開放感を与えている。坪庭により建物が切り取られることで、敷地境界線と直交する外壁面が生まれ、防火上困難であった採光・換気を確保することができている。また、 外壁が屈折することでバランスよく耐力壁を設けることができ、構造耐力上のメリットもあった。軒をもつポーチとバルコニーは、機能的にも視覚的にも屋外と屋内をつなぐ間として、東面の玄関ファサー ドに計画した。
内部空間においても間をつくる方針は通底いている。吹抜とともに建物の中心に配された階段室は、さまざまなレイヤーで建物全体の間を取り持っている。建物全体をつなぐ動線であるだけでなく、階段室に配された開口部からさまざまな視線の抜けが生まれることで、整形につくられた諸室に開放感をもたらしている。最上階のルーフテラスから南面の日差しを取り入れており、階段室自体がライトヴォイド の役割を果たしている。LDKに設けた開口部からは、柔らかい間接光の日差しを取り入れることができる。設備計画においても、諸室に供給した空気は階段室を通じて回収することで満遍なく空気が循環す るように計画しており、階段室の間が全館空調・全館換気システムようになっている。
狭小化、高密度化していく住宅地において、周辺環境と心地良い関係を築くことは難しい。距離による のではなく“間”をつくることで、近接する周辺環境に応答する試みである。